『コロナ危機の社会学』レビュー
〈読んだきっかけ〉
私自身、経済や社会についてじっくり考えることもなかったのですが、2月から今に至るまで、発表される事実と報道から受ける印象が違っていたり、とにかく批判が続く中で、どうしてこんなにうまくいかないんだろう。。。と疑問を持つようになったわけです。
〈どんな本?〉
本書でのジグムント・バウマンの『コラテラル・ダメージ』からの引用
ー私たち社会学者がそうした対話の際に演じるよう求められる二つの役割が、見慣れたものを見慣れないものにすることと、見慣れないものを見慣れたものにすることです。ー
つまり、実態(ありのままの姿)、規範(あるべき姿)、認識(国民視点の姿)にどういったズレがなぜ生じたのか、という視点で捉えた本なのです。
代表的なズレが、“WHOが被害の程度から日本の感染症対策を成功例として挙げたのに対し、それを牽引した安倍内閣の支持率は国内では過去最低を記録していた”ことでしょう。
政府の対応、緊急事態宣言、その他諸々の取り組みに対する実態、規範、認識がズレる原因の一つを「耳を傾けすぎる政府」として表現しています。
メディアの政府批判・国民の恐怖を煽る報道→不安に揺れ動かされる人々→耳を傾けすぎる政府の場当たり的な対応
というサイクルの中で文字通り不安が増幅され続けてきたと筆者は語ります。
〈実際に読んでみて、、〉
本書の前半は政府や自治体が発表した誰でも入手可能な情報をもとに、事実が整理さています。ここを読むだけでも、既に忘れていた、または報道と印象が違うことが分かるかと。
後半は「耳を傾けすぎる政府」の問題を、政治の構造的問題+SNSという新しいメディアの普及による弊害(?)として考察されています。西田先生がトークセッションで語っていたのですが、こうするべき!という結論を出すのは難しい(読者はそれを望んでいるかもしれないが)ようです。
私も読んで明確な答えが見つかったわけではないのですが、出版後のGoToキャンペーン報道などを見るたびに、本書のモデルをいつも思い出します。社会や政策について内省するきっかけになったな、、と思いますね。
以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました♪